先日は伊吹島に行ってきた。
どこでいりこを買おうか考えていたときに知人の紹介で伊吹いりこの網元さんから直接買えることになって。
6月になれば漁が始まるしそれを待てば加工をしている現場も見ることができたんだろうけれど、漁期になると一日忙しくてとても時間がとれなさそう、ということで漁の始まる前にご挨拶にうかがうことに。
伊吹島は香川県の一番西に位置する観音寺市の沖合にある。有名な島だけど、これまで行ったことはなかった。香川の東の端にいると観音寺にすら出かけることは少ないし、ましてやそこから25分かけて船に乗ってというのはなかなかハードルが高かったな。
僕が香川に暮らしていた頃はまだ高速道路なんてなかったし、汽車―もちろん蒸気じゃなくってディーゼルだけど、電車じゃないから汽車ってみんな呼んでた―で行くにも高徳線に乗って高松へ、そこから予讃線に乗り換えてっていう大仕事だった。
上福水産の三好さんは電話でしゃべっているときにはけっこうぶっきらぼうで怖いぐらいだったんだけど、実際にお会いして話すととても笑顔のすてきな人だった。
「どんなんがええんな」と奥様ともども相談に乗っていただいて、僕は最初から大羽(おおば)って呼ばれる大きな、体長10cmほどもあるいりこを買うつもりだったけど、それよりも小さな中羽、きれいにうろこがついたまま銀色に光る銀付(ぎんつき)などなど、たくさん味見をさせてもらった。
カタクチイワシをいりこに加工するのには、鮮度が第一。伊吹島でのイワシ漁は、海岸から5分ほどのところが漁場なんだという。水揚げしたばかりのカタクチイワシを一気にボイルできるから、漁場と加工場が近いのはなによりも強いんだとか。「このへんはな、海水で茹でるんで。ほかのところはよう知らんけどたいがい水じゃわな。きれいな海水でないと茹でられんわな」
イリコスキー製麺所で使うのは大羽、大ぶりで脂の回っていない白いのがベストだと思ってる。これを一晩アタマもワタも取らずに水につけて、決して沸騰させずに出汁をとる。
最近は伊吹いりこも一般の人にも知られるようになってきて、問い合わせも増えて、東京にも展示会へ出展したりしてるんだそうだ、網元さん自ら。「有名になった言うてもな、なかなかわしらまでええ話はまわってこんのんじゃ。自分でちゃんとお客さん見つけんとの」そういえば、NHKの「鶴瓶の家族に乾杯」にも出たらしい。
「大羽ができるんはな、6月の20日か下旬じゃわ。できたらまた教えてあげるで。それまでもうちょっとまっとき」
先週電話してみたときには三好さんはあいかわらずぶっきらぼうな口調で、でも製麺所を気にかけてくれてる様子で。
新しいいりこ、楽しみです。