まな板と包丁が一体になっている、そう、手打ちの実演をやってるうどん屋さんで使っているのと同じもの。
このところ、なんだか切り残しが多いなぁ、と気になっていたら、どうやらまな板部分が反ってきていて包丁とまな板にずいぶんすき間ができてる。まだ開業前だけれど、この包丁とはもう10年以上のつきあいだ。
メーカーに聞いてみると、本体を送り返せば削り直してくれるそうなんだけど、手元に置いておきたいし、さりとて自分で削るのもちょっとね。今は大きなカンナも持ってないし。まな板部分だけの交換も、本体価格の半分近く。そもそもまだ使えるのを交換しちゃうのはもったいない。
どうしたものか、近くに大工さんの知り合いもいないしな、と思案してたら、堀江がすぐ近くじゃないか、って気がついた。いまでこそ家具屋さんは数もへっちゃったけれど、まだ木材加工関連の、建具屋さんとかきっとあるんじゃないかな、って。家具のまち立花通り。今はオレンジストリート?
ただ、いざ立花通りに行ってみると、実際にやってる建具屋さんって案外少ないんだ。加工はしてなくて営業所だけだったりとかね。あるいは、やってはいるけど飛び込みのこんな小さな仕事は請けてもらえなかったり。
どうしたものか、と思いつつ、立派ならんま屋さんを見つけて尋ねてみる。まな板とか削ってもらえません…よね…へんな部品がついてるので、カンナ盤にかけるわけにもいかないんですけど。
ああそれだったらねと、教えてくれたのが堂西銘木店。
床の間とかをつくってるおじいちゃんがいらっしゃるんだそうな。そんな立派な職人さんに削ってもらうのも申し訳ないですよ、そもそも予算がですね、という僕に、まぁ行って聞いてみたら、と気軽な笑顔で言ってくれる。ほらハザード点けたクルマとまってるやろ、あそこ。ということは、こんな仕事でもやってくれるやろ、って思ってるってことだよね。
いそいそと堂西銘木店さんに行ってみると、ちょうど作業場にいらしたご主人と目が合う。お、なんや、何の用や、って感じでこちらもにっこり微笑んでくれる。こりゃ話しやすいや。というわけでケータイで撮った写真を見せながら、ここを削ってもらいたいんですけどね~ってお願いすると、あっさりOK。価格も納得。ありがたい。
翌日、さっそく分解してまな板だけにしたのを持ってふたたび堂西さんへ。
いろんなカンナとか木工用のノコとか、写真でしか見たことのない道具がずらり。おじいちゃんはさっそくカンナをかけはじめて、みるみる平らに。両サイドに余計な部品がついてるから、ちょっと仕事をしにくそうだな。
ここは寒いやろ、事務所でストーブつけて待ってて、って言ってくれるけど、お邪魔でなければここにいてていいですか?と仕事を見せていただく。なんていうか仕事が丁寧で早くって。見てて気持ちがいい。さすがに仕事中はそれまでと違って真剣な雰囲気になってたけどね。
数十分でカンナかけは終わって、少し事務所でお話ししてたら、なんと去年一杯で廃業したんだとか。もったいないですね、後継者の方はいらっしゃらなかったんですか?
私が修行したところもね、そこから独立した他の人もね、りっぱな息子さんがいはるんやけどみんなあかんねん。床の間ってめったに作る人いてへんでしょ。…普通に正月休むだけでもカンナの調子が元に戻るのに時間かかるのに、ずっと休んでたらねぇ。
まぁそう言うてもしょうがないし、体動かさなあかんし。そろそろ山登りでも始めようかと思てますんや。作業場も誰か倉庫にでも使てもらおかな、て。
そうか、今度まな板狂ったら削り直ししてもらうわけにはいかないかもしれないな。
でも、お仕事やめはった後ででもお話しできてうれしかったです。ありがとうございました。
堂西さんからの帰り、らんま屋さんにお礼に寄って、きれいにやってもらえましたー。紹介していただいてありがとうございました、って言ったら、またウチで看板つくってな、おっちゃんが生きてる間に頼むで、だって。
お店には「日本の伝統工芸士」の表示。いや~、なかなかお願いするまでには時間がかかりそうです。ちなみにその表示の横には「となりの人間国宝さん」の認定書も。さすがです。
すんません!スタンプのやつウォッチリスト入れてたんですが終了分から消えてました。とほほ。
うーむ、残念!自分でも探してみまっす!