さぬきうどんブーム(今は第四次ブームの後でセルフ店が定着した、って感じかな)のおかげで、今はさぬきうどん=コシのうどん、という認識になっていると思う。
ただ硬いだけの麺ではコシがあるとは言われない。適度な歯ごたえと弾力と、延びがあるものがコシのあるうどん、って言われるんだと思う。
それでも「グミ系」なんて表現のしかたもあるように、力強いどっしりしたコシから、やさしいふんわりしたコシまで、「コシ」が含む範囲は相当幅広い。コシのないうどんじゃないものがコシのあるうどんだ、って言いたくなるぐらいの。
ただ、実のところ、僕はさぬきうどんの絶対条件はコシだとは思っていない。
子どもの頃、食卓で出されるうどんの麺(親がスーパーや製麺所で買ってきてくれた麺)は、当然茹で麺。今みたいにビニールでひと玉ずつパックされたものじゃなくって、水で締めて玉にされたうどんがセイロに並べられてて、それを自分で袋に取る、っていう買い方だった。
茹でられてからかなり時間が経っているから、コシは基本的にない。だけど、小麦の味と塩味がする、とてもおいしい麺だった。
午前中に茹でられて、数時間たってるような麺を、夕方学校から帰ってしょうゆすらかけずにそのまま麺だけ食べて、それだけで幸せになれるような。
僕の中ではあれはさぬきうどんだった。
今でもスーパーで買っておいしいうどんの茹で麺はあるけど、絶対的に昔と今では味わいに壁があるような気がする。
香川県産小麦が昭和38年、壊滅状態になってしまって、基本オーストラリア産に代わったのが原因なのか。それともやはり子どもの頃の記憶だからなのか。
もちろん、イリコスキー製麺所の麺は、十分にコシが楽しめる麺のはず。だけど、それだけじゃ物足りない。
小麦の味とそれを引き立たせるほんの少しの塩を感じられる、そんな麺にできればな。