はじめてうどんを打ったのは、1995年か96年ぐらい(たぶん)。
自分で打とうと思ったのは、おいしいと思えるうどんに出会えなかったから。
その時は、いりこだしじゃないからおいしくないんだ、とは気づいてなかった。麺がちがうんだよね、って。
実家近くの製麺所から半生うどんを取り寄せて食べて、うん、おいしいよね、でも、なんだか実家で食べるのとちがうな…とは思ってたころ。当然、実家でそのうどんを食べてたときは、母親が自分でとったいりこだしのつゆで食べていたわけ。
だしの味の違いすら認識していないから、これは麺の違いしかない、と考える。半生うどんでも日が経ってるから味が劣化してるんじゃないの、って。
じゃあ、新鮮なうどんの麺を自分でつくろう。
今となっては何を参考にしたのか記憶が定かじゃないんだけれど(残念ながら僕の実家ではうどんを打つことはなかった)、料理本とか雑誌のレシピを参考にしたのか、そういうのを読んだ記憶をたよりにいい加減にやったのか。たぶん後者だろうな。
あれはひどい麺だった。いや、麺とは言えないか。
うどんは中力粉、っていうのは知ってる人は多いと思う。中力粉がなければ薄力粉と強力粉をまぜて、とかね。でもその時の僕は知らなかった。自宅の冷蔵庫に入ってた薄力粉に塩と水を適当に加えて、パンのように捏ねてこねて。
しばらく寝かせて熟成させる、という知識はあったようで、ビニール袋に入れたうどんのタネのようなものを押し入れの布団の間に突っ込んでしばらく置いておいた記憶がある。
寝かせた小麦粉のかたまりを麺のカタチに延ばすのは、すりこぎ。うどんに適切な厚さも幅もこれまたわからないから、今から考えればとても厚くって、とても太い麺線ができた。
鍋で茹でて、釜あげで食べたんだと思う。だしは、さば節と鰹節と昆布でとって、しょうゆとみりんを足したはず。
だしはまずまずだったけど、麺はただの細長いだんごだった。コシもなにもない、ただ固い、細長いだんご。ゆでる途中でぶちぶち切れたな。
もう一度やろうとしなかったことを考えると、それを改良してもどうにもならないような味とか食感だったに違いない。当然だよね。
その後はずっと、取り寄せた半生うどんとさば節のつゆが、わが家のうどんだった。満足はしてないけど、まあこれがあればいいか、って。
ほんとに満足できるうどんができるのは、それから5年後。ちゃんとしたさぬきうどんレシピに出会って、そのとおりやればおいしくできた。なんてすばらしいんだ、って感動したのを覚えてる。
そう、基本さえ守れば普通のうどんはわりと簡単にできる。
そこからだんだんとうどん打ちにはまっていくんだけど…